天使は金の瞳で毒を盛る
そして、私は身を思いっきりよじった。

「ちょっと、やだ、やめて!お願い!ごめんなさい!やだってば!」

人が脇腹弱いの知ってて!

榛瑠は私の脇腹をくすぐるのをやめてそのままベットを下りた。

「ほら、子供の時と変わらないじゃないですか」

涼しい声が頭の上から降ってくる。私は悪魔みたいな声の主を見上げた。

無表情な金色の目が私を見下ろしていた。

「ねえ、もしかして、榛瑠怒ってる?」

榛瑠はわたしを見下ろして婉然と微笑んだ。

…だめだ、これはかなり怒ってる。

そう思ったら急に悲しくなって来た。私は毛布をまた頭から被った。

そりゃあ、私も油断したと思うよ?でも、同僚と飲んだだけじゃない?私のせいなの?やだ、もう。

横に榛瑠が座る気配がした。体に力が入って縮めてしまう。と、毛布の上から頭にそっと手が置かれた。

「何か、食べられそうですか?」

私は毛布にもぐったまま首を横に振った。

「じゃあ、温かい飲み物でもいれましょうね。ゆっくりでいいので、起きて来て下さい」

そう言った後、部屋から出て行く音がした。私はそっと顔を挙げた。誰もいない。

着替えは部屋のスツールの上に畳んで置いてあった。

毛布を引きづりながら取りに行く。昨日着ていた服全て、きちんと洗濯しておいてあった。…下着も。

恥ずかしいのと、悲しいので、その場に座り込んでしまった。

なんか、もう、お嫁にいけない。覚悟を決めて榛瑠にもらってもらおうかな。

彼にだってメリットはあるんだし。もういいや、それで。もう、どうでもいい気がしてきた。
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