天使は金の瞳で毒を盛る
「ですから、あなたに直接報酬を支払ってもらうのもいいかもしれないと思いまして」

「…はい?」

「ですから、報酬。わかりやすく言うと、助けたご褒美」

ご褒美って…、そりゃ、感謝はしてるけど何を?!悪い予感しかしない…。

「あの、私のお小遣いの範囲でぜひ…」

「ありがたいことに、お金にも物にも困っておりませんので」

そうでしょうとも。

「さて、どうしましょうか、何がいいかな」

「いや、それ、どっちかというと私が考えるものじゃないの?っていうか、そもそも報酬取るの?」

「人がただで自分に何かしてくれるのが当然と思ってます?」

「え、いや、あの…」

そうだけども…。善意というものはないわけかしら。でも確かに、榛瑠に頼りすぎてはいるなあ、とは思う。

「わかったわ、なにがいい?」

「どうしましょうか、お嬢様」

榛瑠がソファに座ったままこちらを見る。顔が何か無駄に楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。

「そうだな、じゃあ、ご褒美にキスでもしてもらおうかな」

………。

「はあ?何言って!」

思わず叫んでしまった私の言葉を無視して榛瑠は続けた。

「欲しいものもないし、特になんの準備もいらないし、よくないですか?」

準備ある!心の!

「レディはそれくらいさらっとできないとね」

なんの話?聞いたこともないわ、そんなの!

「何それ、一択?」

榛瑠はにっこり笑う。
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