天使は金の瞳で毒を盛る
絶対、ただ単に楽しんでる。性格悪っ。悪魔っ。

「断ったらどうなるの?」

「別にどうにもなりませんよ?ただ、まあ、今日はまだまだこれからだし、明日は所用がありますが、月曜日からはまた会社でお会いしますしねえ」

断るなってことじゃないのよ!断ったら別の何か考え出すだけでしょ、それって!

榛瑠が自分の方に手招きする。しょうがないので、のろのろと近づく。

「…フレンチキスでもいい?」

「ダメ」

…もう、本当に泣くからね、そのうち。

私は榛瑠の前に立って彼を見下ろした。茶色がかった目が見返す。恥ずかしくって直視できない。

「せめて、目をつぶって下さい」

はい、と、榛瑠が目を閉じる。だからといって恥ずかしさが消えるわけではなく。

ううっ、なんか無駄に相変わらず綺麗で嫌。相変わらずまつげ長いし。肌白くて綺麗だし。髪なんてフワサラだし。

金色っぽいのに、中心の方は茶色なんだよねえ、榛瑠の髪って。ていうか、あれ?

「お嬢様?」

榛瑠が目を開ける。

「榛瑠ピアスしてる。初めて見た。っていうか、ネックレスもしてる。なんで?」

はっきり言って、チャラい。でも、似合う。

「ああ、昨夜のままなので。休みですし」

「ねえ、指輪もしてなかった?」うっすらと記憶にある。かっこよくて可愛いやつ。「見たい、見せて」

「嫌です。今必要ないし。」

ケチ。サービス精神が足りないのよね、と心の中で思う。口にしたところでどうせ相手にされないし。
< 91 / 180 >

この作品をシェア

pagetop