天使は金の瞳で毒を盛る
「それより、さっさとして下さい。それとも焦らしているんですか?」

うっ、さりげなく誤魔化そうと思ってたのに…。

「なんで、こんなこと?キスなんて…」

あなたには大したことなくても…。

「なんでって、したいから?あと、面白いから」

もう完全にからかっているだけじゃない!

「…私、仕事モードの時のあなたの方が好きだわ」

「そうですか?それならそちらにします?ちょうど来週大口の発注がある予定ですし、仕事あれこれ回しましょうか?上司の権限で」

「えっ」

今でも色々滞り気味なのに、これ以上増やされたら…。ていうか、もうそれ、ご褒美でもなんでもなくただの嫌がらせじゃない。

「パワハラ反対、あと、セクハラも」

「同意します。人を深夜に呼び寄せるようなこととか、無理やり風呂入れさせるとかね」

…言われてみれば、そうだわ。いや、でも。えーと。

「ああ、もう!いいから、目をつぶってよ!」

はいはい、と笑っていうと、榛瑠は目をつぶった。もう、さっさと済ませてやる。

覚悟して、顔を近づけたところで気づいた。ちょっと待ってよ、私、自分から人にキスしたことなんてないわよ、どうすればいいの?!

近くで見ても彼の造形の良さは崩れない。神様は結構不公平がお好きらしい。こんな顔立ち生み出さなくてもいいのに。

ていうか、鼻筋通っていて鼻高くて、邪魔だわ。どうするの、これ。どうすればいいの?ナナメ?え、あれ?

とにかく自分も目をつぶって。もう、知らないから!
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