天使は金の瞳で毒を盛る
呼吸が荒い。身体が震える。なに、なんで…。

「一花?大丈夫?」

「…なんでこんなことするの?」

声が震えてしまう。

「…じゃあ、なんで一花は大人しくされるままになっているの?」

なんでって、だって、だって、どうやって逃げるのよ、逃げられないに決まってるじゃない。本当は、だって…。

「だって、されるんだもん」

榛瑠の手が伸びて、私の両頬をつねった。いたいし!

「あなたは、昨日あんなことがあったばかりで、そういうこと言いますか。少しは拒みなさい。」

あなたが今それ言う?すごく理不尽じゃない?

「…よいしょっと」

呆れる私を無視して榛瑠は私を持ち上げると、自分の横に座らせた。

私はソファの上に正座になりながら彼をチラッと見る。全く悪びれることもなく涼しい顔をしている。あー、もう!

「きっとこうやって、たっくさんの女の子を誘惑してきたんでしょう。なんかもう、人としてどうなの!それ!」

榛瑠が横目で私を見た。どきっとする。彼の口元がふっとゆるむ。

「…だとして、なにか問題でも?」

っこのっ、悪魔!大っ嫌い!

「でも、そんな事してませんから。」

しれっと言う。ぜっったい、嘘。

私は横に座っている人を睨みつけた。榛瑠は素知らぬ顔で置いてあった本を手に取るとパラパラめくっている。

なんだか、この涼しげな表情が許せない。私ばかりオタオタしてる。この人にとってはあんなキスぐらい遊びの範疇なんでしょうけど、私にとっては…。

そこで、ふっと気づいた。
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