天使は金の瞳で毒を盛る
待ってよ、ちょっと、待ちましょう、私。びっくりすること続きでスルーするところだったけど、私ってば今朝、裸でしたよ?

でもって、榛瑠はとなりに寝てたわよ。服は着てたけど。…うん、彼は着てた。だから、大丈夫よね?私?いくら榛瑠でも、そういうことは遊びの範疇を超えるよね?

ね?

うん、大丈夫、体に違和感ないし。

…ていうか、違和感出るかどうかも知らないわよ。そんな知識も経験も持ち合わせてないわよ。どう判断するの、これ?

聞くの?なんて?なんで、自分のことがわからないのよお、一花。

「いったい、今度はなにを考えてそんな顔になっているんですか?」

どんな顔か聞く気にもならない。ああ、もう、忘れてしまおう、きっと大丈夫。でもなあ、自分のことなのにあやふやって気持ち悪い。

あーでもっ。

「なんですか、いったい。」

「…あの、夕べですけど、その…」

「はい」

「…あの、うんと、その、……やっぱりいい」

聞けるわけがない。どっちにしたって記憶ないって最悪。

「ご自分が処女かどうか疑っているなら大丈夫ですよ。私はなにもしてませんから」

「えっ、あっ」

私は思わずソファから滑り落ちそうになる。大丈夫ですか、と榛瑠が支えてくれる。

「え、いや、大丈夫」

なんで考えてることわかったの?でもよかった。私は無実!って感じ。

あれ、でも、彼がなにもしなかったのは当然として、うん、そう、当然なの、として、だからって私が、その、一度も経験がないって決めつけるのはおかしくない?そうでしょ?

「あなたが紳士的だったのは当然として、私の経験の有無とは結びつかないと思うわ」

そうよ、私だってもう、立派に一人前の女性なんですからね。榛瑠がいない間なにもなかったって決めつけるのはいただけないわ。…真実はともかく。
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