天使は金の瞳で毒を盛る
「ああ、そうですか、そうですね、へえ」

「へえってなによ」

なにかバカにされてる気がするんですけど。

「いや別に。お嬢様ももう、大人でいらっしゃいますし、一人の女性の私生活をどうこうはいいませんが」

「当然です。私にもあなたのいなかった時間がきちんと流れているんですからね」

「確かに。まあそれに、例えそれが妻になる人だったとしても過去の詮索はしませんよ。処女だろうがなかろうがどちらでも」

「…気にならないんだ」

なんか、ちょっと意外、な気がするのはなんでだろう。

「なりませんね、せいぜい扱いが変わる程度かな」

「…扱い?なにそれ?違うもの?」

「違うでしょう、それこそ、当然。…大人の女性相手なら、いろいろと」

そう言って榛瑠が近寄ってきた。あれ、なんか…、

思わず身を引く。彼は容赦なく迫ってきて気がついたらソファの上に押し倒されているような形になっていた。

「え、ちょっと、やだ、だめ、うわっ」

もう、耐えられない!私はぎゅっと目をつぶって手で顔を覆った。その手にそっと榛瑠の唇が触れたのがわかった。ふっと、気配が軽くなる。

「冗談ですよ、あなたがつまらないこと言うから。はい、起きる」

そう言って、私を引っ張り起こした。

「ごめんなさい…」

確かに、恥ずかしいと言うか、つまらない意地をはったなと思う。でもなんだか悔しくて。

下を向いている私を榛瑠が抱き寄せた。彼の腕の中に包まれる。

「こちらこそすみません。少しからかいすぎましたね。…大丈夫ですよ、あなたが心配しなくてはならない事は何もないです。」

そう言って、私の頭を優しく撫でた。
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