天使は金の瞳で毒を盛る
「こういうのってなんて言うんでしたっけ?」

「え?なんの事?他の言い方ってこと?自己嫌悪とか?」

「ああそうか、自己嫌悪か」

なんなの、いったい。榛瑠を見ると皮肉っぽい表情でうっすらと笑っている。

…もしかしてこの人、落ち込んだ事、ないの?

「あの、あなた、落ち込んだ事ないの?」

「ありますよ、あるとは思うんですが、…そう、リカバリーできないのは久々ですね。大丈夫のつもりでいたんですけど」

「はあ…」

「おかしいな、やるべきことやった上でこれか…」

榛瑠は独り言のようにブツブツ言う。なんなんだ、いったい。

と思ったら、首を抱えながら下を向いてしまった。

「ちょっと、ちょっと、大丈夫?」

こんな榛瑠見た事ないよ?珍しすぎて突っ込むこともできない。

「自覚したら余計きました。原因はわかっているんです。優先順位の判断ミスと、あと、見通しの甘さですね。…口にするとロクでもないな。馬鹿さ加減にウンザリする」

いや、あなたがバカだって言うなら、私なんてお猿さんレベルですよ?

「ごめん、聞いていい?いったい何を失敗したの?」

彼がここまで落ち込むなんてどんな事?想像も出来ない。なにやっちゃったんだろう。

榛瑠が私を見た。ドキッとする。聞いちゃいけなかったかな、やっぱり。
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