突然現れた御曹司は婚約者

会場内には二重に席が用意されていて、女性が内側に固定、男性が外側で席を動いてくシステムがとられており、受付で配られた用紙には座る場所も指定されていた。


「オーナーが気を利かせてくれたから寧々とは隣同士だね。こういう場所初めてで不安だったから良かった」
「でも、一対一で話すから隣同士である利点はないんじゃない?」


そっか、と納得するも、それでも寧々が一緒にいてくれるだけで不安が和らぐ。

そのことを伝えようと寧々の方を向いたとき、長身の男性が視界に飛び込んで来た。

そのせいで発しようとしていた言葉が別のものに変わった。


「どうして……?」


どうして蓮がここにいるの?


「え?なに?…って、誰?」


振り返り、蓮を見た寧々に彼は黒目だけをそちらに動かした。

が、すぐにまた私に視線を戻し、私を見据える。


「この人が例の東堂蓮さんだよ」


寧々の質問に答える気がない蓮に代わり、小さな声で寧々に教える。

すると寧々は仕立ての良さそうなスーツに身を包んだ蓮を上から下まで見た。


「へぇ。すごいイケメン。王子様みたい」


そこに関しては寧々と同意見。

申し訳ないけど、他の参加者とは比べものにならないほど彼の容姿は頭抜けている。

それは周囲にいる女性たちの熱い視線からも明らかで、さっきの騒ぎは蓮という超絶イケメンが現れたからだと思う。
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