突然現れた御曹司は婚約者


「はい、オレンジジュース」


廊下に備えられているベンチに腰掛けていると、寧々が会場内からオレンジジュースを持って来てくれた。


「ありがとう」


受け取りひと口含めばジュースの甘さと寧々の優しさに触れて、幾分、気分が和らいだ。


「ごめんね、寧々まで巻き込んで」
「巻き込まれてなんかいないから気にしないの。それより東堂の息子よ。ああいうなんでも持っている男は女も自分の思い通りになると思ってるのよね。そんなことないのにね」


寧々には蓮とのやり取りを話した訳ではないけど、寧々は寧々なりに彼と話してそう感じたらしい。


「良かった。同じ感覚で」
「でも彼の見た目とステータスだけに飛び付く女もいるのよ」


そう言って私の背後を寧々は睨むようにして見た。

その視線の先を追うと、そこには3人の女性が立っていた。


「あなたがホシザキシオリさん?」


3人のうちもっとも小柄でアイメイクの濃い女性が高いヒールの靴をカツカツ鳴らして足早に寧々の元へと近付いて来た。


「違います」


寧々は立ち上がり、至極冷静に答える。

背の高い寧々に見下ろされて女性は少しだけ表情が険しくなった。

でもそれもつかの間。

寧々の背後に座っている私のことを身を乗り出して見て、口元にイヤな笑みを浮かべて言った。


「じゃあそっちの子がホシザキシオリなのね?」
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