突然現れた御曹司は婚約者
「そうですけど、それがなにか?」
私に代わって答える寧々に『斎藤』と書かれた名札を付けている女性が背後にいるふたりを見て笑って言った。
「この子なら勝ち目あるかもしれないわ」
「なによ、それ。どういう意味?」
短気な寧々は斎藤さんのあからさまに人をバカにする態度に苛立っている。
反対に冷静にその場を見てた私には彼女の言いたいことが分かる。
蓮が何かにつけて私の名前を出して答えていたことを知っているし、蓮ほどのハイスペックな男性が街コンに参加していれば自分のものにしたいと思い、意中の相手を敵視する気持ちもなんとなく分かるから。
立ち上がり、斎藤さんを睨むようにして見ている寧々の肩を引き、コソッと言付ける。
「東堂さんの想い人が美人の寧々だったら敵わないけど、地味な私なら諦める必要ないんだって言ってるんだよ。全然関係ないのに、寧々まで面倒なことに巻き込んじゃって本当にごめんね」
「なんですって?!面倒?!」
地獄耳の斎藤さんは最後の部分に飛び付き、鋭い視線を寄越してきた。
でも、『面倒』だと思ったのは蓮に対してで斎藤さんに言ったわけじゃない。
少なくとも初対面の相手に失礼な口を利くような教育は受けていない。
それなのに斎藤さんは怒りを露わにする。