突然現れた御曹司は婚約者
「失礼な女ね!こんな女のなにがいいっていうのよ!別段綺麗でも可愛くもないし、スタイルだって普通じゃない!」
「あはは。なに言ってるの?栞はあなたより断然可愛いし、スタイルだっていいわよ」
鼻で笑いながら斎藤さんに応戦したのは寧々だ。
「ちょっと寧々!」
腕を掴んで止めるも、寧々は止まらない。
斎藤さんの目の前に立ち、小柄な彼女を見下ろしながらメンチ切った。
「目の前から消えて。あなたと話してると気分悪い」
「なっ!なんて生意気な子なの!ちょっと綺麗だからって調子に乗らないで!消えるのはあなたたちの方よ」
そう言うと斎藤さんが手に持っていたビールの入ったコップの飲み口をこちらに向けた。
その瞬間、寧々を守るために抱きつく。
でも、あれ?
冷たくない。
「冷てー」
その声に目を向けると、蓮が私たちと斎藤さんの間に立っていた。
「なにしてるんですか!」
急いで背中側に回り確認すると、カーディガンがビールで濡れてしまっていて、そこだけ色が濃くなっている。
「大変。早く洗いに出さないとシミになっちゃう」
「いや、こんなの気にしなくていい。替えはいくらでもあるから。それより栞が濡れずに済んで良かったよ」
優しい口調と笑顔に、今の今まで蓮のことをよく思っていなかったにも関わらず、トクンと胸が鳴った。
でもビールを掛けた張本人が私と蓮の間に割って入って来たことで意識は彼女の方に向く。
「まぁ、大変!どうしましょう。手が滑ってしまって…。すみません。そのカーディガン、私が責任持ってクリーニングに出しますわ」