突然現れた御曹司は婚約者
どんな内容なのか、気になりつつも、牧田くんの仕事を手伝うこと2時間。


「終わったー!」


腕をぐーっと伸ばしてパソコンの前で固まっていた体をほぐす。


「ありがとうな。ふたりでやったから早かったよ」


それでも2時間かかっている。

普段、どれだけ大変な思いをして、ひとりでここに残って仕事をしていたのか、それを想像したら定時で帰っていた身としては申し訳なく思う。


「気にするなって。慣れたもんだよ。それよりお腹空いただろ。なにが食べたい?」
「そうだなー」


疲れていそうな牧田くんには消化の良いものの方がいいかも、なんて考えながら鞄を手にして立ち上がり、牧田くんと一緒に通用口から出る。


「わぁ。真っ暗だね」


日中は人も車の往来もそこそこあるけど、田舎扱いされることの多いこの土地は20時を過ぎるとその数がめっきり少なくなる。


「街灯も少ないんだよな。足元危ないからほら、手貸せ」
「大丈夫だよ。慣れた道だもの」


妹弟のたくさんいる長男は本当に心配性だ。

いくら大丈夫と言っても、普通に歩いて見せても、結局は私の手を取り、繋いでくる。


「牧田くんのこと好きな子が見たら勘違いさせちゃうよ」
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