突然現れた御曹司は婚約者
私が知る限り、牧田くんのことを好きだと言っている同僚はふたりいる。

そのふたりは今、この場にはいないけど、何らかの形で知られて誤解されるようなことはしたくない。

片方の手で繋がれた手を離そうと試みる。

でもさらに強く掴まれてしまい、離せない。


「牧田くん、ねぇ、離して」


少し前を歩く牧田くんに願い出るも、無視されてしまう。


「勘違いされて構わないから」
「なに言ってるの。困るのは牧田くんだよ?」


そう言うと突然牧田くんは立ち止まり、手を離すと真面目な顔して振り返った。


「俺は困らないよ。だって俺は…」
「はい、そこまでー」


また?!

また牧田くんの口が手で塞がれた。

もちろんそんなことするのは…


「東堂さん!なにしてるんですか!」
「いやータイミングいいな。やっぱり栞と俺は結ばれる運命なんだな」


こんなときになに言ってるんだ。


「離せよっ!なんなんだよ、お前は!」


また牧田くんを怒らせたじゃないか。


「この前自己紹介しただろ。もう忘れたのか?」


あぁ…牧田くんにさらにそんな口きいて。

牧田くんも蓮を思いっきり睨んでる。
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