突然現れた御曹司は婚約者
「ふたりともここ、公道ですからやめましょう」
見兼ねて止めに入る。
「そうだな」
そう言って私の手を取ったのは蓮。
突然のことに抵抗するも、ぐいっと蓮の方に引かれてしまい、彼の腕の中にすっぽり埋まってしまった。
「ちょっと、離してください。私、これから牧田くんと食事に行くんです」
「食事?そんなの許せないな。第一、俺はカーディガンを取りに来たんだ。きみの家に置きっ放しにしたカーディガンをな」
え?
なに言ってるの?
あのカーディガン、まだ着るつもりでいたの?
捨てるって言うから持って帰ったのに。
それにその言い方。
勘違いさせる…
「栞の家にカーディガン?栞の家に行ったことあるのか?」
ほら。
完全に勘違いしている牧田くんの静かな声が夜道に響く。
「ふたりはもうそういう関係なのか?」
「違うよっ!ね?違いますよね?」
同意を求めるように蓮を見上げればニヤリと口元に笑みを浮かべていた。
「なっ!まったく、なんてひとなの!」
牧田くんに私たちが恋仲であるかのような言い方をあえてしてんだ。
「誤解を招くような言い方しないでくださいよ!」
蓮の腕を振りほどき、視線を下げている牧田くんの顔を覗き込み、蓮の言ってることは全部違うと伝える。
でも牧田くんは首を左右に振った。