突然現れた御曹司は婚約者
「栞が俺と手を繋ぐことに『勘違いされたら困る』って言ってたのはコイツのことがあったからなんだろ」
「違うってば」
否定しても牧田くんは聞く耳を持ってくれない。
「結局栞も普通の女なんだな。イケメンでハイスペックな男に弱いんだ」
どうしてそんな解釈になるの?
どうしたら誤解が解けるの?
困る私の背後から静かだけど怒りに満ちた声が聞こえてきた。
「栞が普通だと…?」
振り向けば蓮は奥歯を噛み締め牧田くんを睨みつけている。
「…っ!」
怖い顔なのに男らしく強い表情にドキッとしてしまった。
今まで見てきたのがにこやかな表情ばかりだったせいもある。
そのギャップにこんな状況なのにも関わらずときめいてしまう私は最低だ。
気持ちを切り替え、蓮の止めに入る。
でも怒りの収まらない蓮は私の腕を取り、また抱き寄せると牧田くんに冷たく言い放った。
「お前に栞を好きになる資格はない。栞への気持ちごと消え去れ」
「なんで、なんでそんなことお前に言われなきゃいけないんだよっ!」
「牧田くんっ!止めっ…!」
私が止めに入るより先に牧田くんの拳が蓮の頬に当たった。