突然現れた御曹司は婚約者
「秘書の方に調べてもらってないんですか?」


連絡こそして来なかったけど、調べられてると思っていたから蓮の言葉に驚きを隠せない。

ご飯を食べる手が完全に止まった私を見て、蓮も箸を置いた。


「嫌がってたじゃないか。栞が嫌がることはしたくない」
「あ、じゃあ私にもう会いに来ないで…」
「それは却下」


即座に答えられて、その想像通りの答えに思わず笑ってしまう。


「いいな、その笑顔。ずっと見ていたくなる。今日、泊まって行こうかな」
「それはダメです。あ、でも電車の時間、大丈夫ですか?」


新幹線の終電は意外と早い。

時計を見ればそろそろ出ないと間に合わない時間が来ていた。


「大丈夫だ。運転手を呼ぶから」
「こんな遅い時間に?!そんなの運転手さんがかわいそうです」


それが仕事だと言われてしまえばそれまでだけど、往復で相当な時間かけて運転する人のことを考えたら不憫に思ってしまう。

かと言って泊める訳にもいかないし。

仕方ない。


「私が運転して行きましょうか?」
「そんなことさせられる訳ないだろ。いいよ、タクシーを頼むから」


そう言うとすぐにタクシー会社に電話して、10分後に来てくれることになった。
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