突然現れた御曹司は婚約者
だとしたらなんか嫌だ。


「軽いとか思われたくないです。そんなつもりでここにいるわけじゃありません」


正直に言うと蓮は声を出して笑った。


「あはは。バカだな、そんなこと思ってないよ」


信号が青に変わり、蓮はシフトレバーを操作した。


「栞はご両親のことが知りたいんだろ?」
「え?」
「街コンのときに言ってたもんな。その答えをまず教えるよ」


そうして連れてこられたのは大きなお屋敷。

白いタイル張りの壁の家屋は3階建てで、尖塔と縦型のアーチ窓が中世ヨーロッパの洋館を思わせる。

博物館かなにかだろうか。

駐車して、慣れた様子で玄関の扉を開けて中へ入って行く蓮のあとに続き、足を踏み入れると外観以上に美しい歴史を感じさせる内装が目に飛び込んできた。


「すごい…」


調度品も鑑定に出したら驚くような金額が出そうな、一見して高価だと分かるものばかり。

ただ、博物館にしてはなにかおかしい。

どことなく生活感を感じる。

そんな不思議な建物を見て、蓮に視線を移すと、1匹のゴールデンレトリバーが尻尾を振って蓮の元へやって来た。
< 48 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop