突然現れた御曹司は婚約者
「この子だ、って思ったよ。俺が求めてたのはこの子だって。今までどんな女の子と付き合ってもどこかしっくり来なかったんだ。ただ、この感情の原因はなんなんだろうって思った。一目惚れなんてしたことなかったから。だから栞のことを調べさせてもらった」
それが私の個人情報を知っていた理由…。
「辿り着いた結果に驚いたよ。でも両親に『運命の相手を見つけた』と話したら母親は涙を流して喜んでくれた」
親の涙を初めて見た蓮は私に向く自分の感情は間違っていないと確信したらしい。
話はそれこそ運命的過ぎるけど、蓮の言葉に引き込まれていく。
「他の男に告白されるタイミングに合わせて行けたのも栞のお母さんの導きなんじゃないかと思ってる。栞に恋人がいないのも、きっと俺に出会うためだったんだ」
そう言われるとそうかもしれないと思ってしまうのだから不思議だ。
そのくらい理路整然としていて、蓮の言葉に納得してしまう。
今まで恋愛というものをしてこなかったけど、これだけ運命的で導かれたものならこの人と向き合ってもいいかもしれないと思うほどに。
現に頬から手が離されたら、さみしい気持ちになっている。
「もっと触れていて欲しかった?」
私の表情の変化に気付いた蓮が意地悪く言う。
恥ずかしくて、そっぽを向けば「ハハ」と笑った。
「少しは前向きになってもらったって捉えていいのかな?」
「さあ?」
誤魔化し方の分からない私はそんな返答しか出来ない。
声を殺して笑っている蓮を少し睨めば「ごめん」と謝られた。
「俺は栞が嫌がることはしないって前に言ったよな?だからスケジュール表も嫌なら変更するよ。栞が望むことを優先しよう」
「いえ。せっかくですからこのスケジュールは遂行しましょう。ただし、キスはなしでお願いします」
まだそれは早い。