突然現れた御曹司は婚約者
未来
「へぇ。栞からはキスしたのー。すごいじゃない」
「頬にだよ!頬に!」
「それでもよ」
いつもの喫茶店でオムライスを前にしてニヤニヤ顔の寧々を見て、話すんじゃなかったと後悔する。
でもこの先、どうしたらいいのか、あと、牧田くんともどうしていけばいいのか、相談したかった。
「あぁ、牧田くんなら大丈夫よ。私がひと肌脱いで牧田くんのことを好きだっていう後輩の背中を押したから」
「そうだったの?」
でも言われて思い返してみれば、週が明けてからのふたりの雰囲気は少し違っていた。
ホッと胸をなで下ろし、オムライスを頬張る。
「美味しい」
「良かったわね」
いつもより柔らかな寧々の声に顔を上げると、寧々は男性ならいちころになるくらい美しい笑顔で微笑んでいた。
ただ、美し過ぎてどこか怖い感じがするのは何故だろう。
「寧々?」
恐る恐る名前を呼ぶと一転、寧々の表情が陰った。
「みんなずるいわよ。私だって幸せになりたいのにっ!」
「ちょ、ちょっと寧々!みんな見てるから!」
急に大声を出した寧々にお客様からの視線が集中。
私まで恥ずかしくて身を縮めて寧々を抑える。