Room sharE
「城戸さん!お忘れ物ですよ!」
さっきの女性警官に呼び止められて、いつものケーキ屋のビニール袋を受け渡される。
ああ、そうだった。すっかり忘れていた。ユウキへのお土産のケーキ。
「城戸さん?俺が何か?」
聞かれて、私は首を横に振った。
「いいえ、何もないわ」
私は、彼に何を言うつもりだったのだろう。何を聞くつもりだったのだろう。知りたくないと思う反面、やっぱり知りたくて、でも―――知らない方が幸せなことって、きっとある。
ケーキが手元に戻ってきたことが、それを思い出させた。
私はユウキの本当の気持ちを知って、幸せじゃなくなった。
幸せで居たかった。
ただ、一緒に―――隣で笑い合いたかった。
でも
私たちは壊れた。
二度と戻ることができないものにまで、徹底的に―――
タナカさんとなら、
私はやり直せるかしら。
幸せになれるかしら。
いいえ、そんな資格きっと私にはない。