Room sharE
ごくり、と喉を鳴らしてエツコが先ほどとは違った種類の何か奇異なものを見るかのような目つきで私を眺めてきた。
私は喉の奥で小さく笑い声を漏らし、その鍵のついたチェーンをタンクトップの胸元に仕舞い入れた。
「冗談よ。これはクローゼットの鍵。小さいけど金庫とか入ってるしね。防犯用に一応、ね」
にやりと笑うと、エツコは一瞬だけきょとんとした後、
「もぉ!びっくりさせないでよ」と私の脚を蹴る素振り。私は笑い声を挙げて、それを避けるフリ。
エツコも笑った。
「でもさ、あんたは一途過ぎなのよ。やられたらやり返すぐらいでいなきゃ。
そうじゃなきゃつけあがる一方だよ」
マシンから降りて、エツコは持参してきた清涼飲料水のペットボトルに口を付ける。私は額に浮かんだ玉のような汗をタオルで拭いながら、
「やり返す?」と問うた。
「もったいないよ、そんなに美人なのに。男は何もアイツ一人じゃないんだよ?
浮気されたんだから、浮気し返すぐらいしなきゃ。それで巡り合えた男があいつより良かったら、乗り換えちゃえば?」
潔癖が入っているエツコにしては随分蓮っ葉な物言いだ。だけど、潔癖が入ってるからこそユウキの仕打ちに腹を立てていて、その報復を考えているのだろう。
違う男――――か……
それもいいかもね。