Room sharE
「大丈夫よ。あの女は留置所に居るんでしょ?」
私が冷めた声で答えると、
「あんたは世間知らずだから、知らねぇだろうけど。SNSで根も葉もない噂が飛び交ってんだよ。
心無い噂だけなら良いが、その中にたった一握りの真実も隠れてる。
あんたの居場所……このマンションだってそのうち知られるかもしれない。そうなったら興味本位で覗きに来るヤツも来るだろうし、もっとたちが悪いとあのモデル女の熱狂的なファンに刺し殺されかねないんだぜ。
そんなこと知らずして、今日だって平気で出歩いてるし。しっかりしているようで、危なっかしいんだよ、あんたは!
ほっとけねぇんだよ!」
タナカさんの怒鳴り声が狭い箱の中で響いて、彼の怒声がまるで鉄の塊をビリビリと震わせているように―――思えた。
私が口を噤んで目を開いていると、タナカさんは流石に言い過ぎたと思ったのか、口元を手で覆い僅かに俯いた。
「ごめん……言い過ぎた…」
私は無言で頭を横に振った。
「ごめん」タナカさんはもう一度謝った。私はそれに対しても首を横に振った。「いいえ、あなたは悪くない。本当のことだから」
「本当にごめん。俺―――君を傷つけた。カレシに浮気されて傷ついてる君に―――簡単につけ入ることができるかも……って高を括ってた。君を軽んじてたかもしれない。
ごめん。
でも―――
君を想う気持ちに嘘はない。
はっきりと言ってなかった俺が悪いけど、本当に俺―――最初から会ったときから―――君のこと」
その後の言葉を私は遮った。
自らの―――口づけで。