Room sharE
Day7. Strawberry shortcake ♣Bed
この日はとても
――――寒かった。そう、とても―――ね。
部屋の中でさえ吐く息が白い気がするほど。
そう言えば昨日雪が降るようなことニュースで言っていたかしら。今日は珍しく遅くまで寝ていたから、まだニュースは見ていない。
一日テレビを点けることなく、私はいつもより倍かけて身支度を整えた。
今日は――――そうね、
何かが起こる予感がした、と言うべきかしら。
理由や前触れなんてないわ。ただの女の勘よ。
「私の隣に住む人はね、ハンサムでスタイルが良くて…声もいいのよね。
どこか謎めいた雰囲気も好きなの。
――――え?そんな男住んでたかって?
一週間ほど前からよ。
独り暮らしじゃないわ。男二人…多いときは三人に増えてる。
――――え?いい歳した男ばかりで住むのは変?
今流行りじゃない、ルームシェア。
あなたと私だって、してるでしょう?
――――“同棲”?バカなこと言わないで。もう私たち終わってるんだから。
ああ、ちょっと待って。
噂のお隣さんが来たわ。
それじゃまたね」
私は通話を切った。
――――タナカさんの目の前で。
扉を開けたまま、私の目の前で一部始終を聞いて突っ立っていたタナカさんは無理やりと言った感じで苦笑を浮かべ
「随分簡単だな。終わりってそんなもん?」と聞いてきた。
「簡単よ。電話でも言った通り私たちとっくに終わってるもの。今更修復なんて無理だわ」
そっけなく言うとタナカさんは後ろ手で扉を閉め、パタン……と渇いた音が廊下に響き渡ったのを聞き届けると
「石のように頑なだった君の心がどうして溶けたのか―――知りたいな」
「教えてあげるわ。
でもそれはベッドの中で―――ね」
意味深に笑うと、彼も同じ微笑みを浮かべ私たちは口づけを交わした。
彼は興味深そうに目を細め、私の腰に手を回してきた。彼のコートの肩に触れると、ひんやりと冷たい感触がした。雨にでも打たれたのだろうか。
「参ったよ。ここに来るとき雪に降られてサ。交通機関は一部麻痺してるし、“コレ”を取りにいけるか心配だった。
これ、頼まれてたケーキ受け取ってきたよ」
タナカさんに手渡されたのはケーキの箱が入ったおなじみの店のビニール袋。
「ありがとう。ケーキを食べる前に―――私が
温めてあげるわ。
今日は大好きなショートケーキなの。後で食べましょ」
「後で?」
タナカさんが挑発的に笑う。
「その前に何が食べたいの?あなたは」
私も同じだけ挑発的に笑うと、タナカさんは目を細めてとてもきれいな笑みを浮かべた。
「決まってるだろ、あなただ」