Room sharE
私たちは夢中でキスを交わした。
ここはエレベーターじゃない。誰かに見られる心配もないし、噂されることもない。
私たち二人だけの―――空間だ。前はユウキとの空間だったのに
もう、私の愛したユウキは
どこにも居ない。
タナカさんが私を壁に追いやり、唇で唇を押し付ける。私が反撃のように彼の胸元を強く押し、今度は私が彼の唇を奪う番。
そうやってどちらからともなく仕掛けたり、仕掛けられたり―――寝室までの甘い甘い距離は長く感じられたけれど、でもあっという間だった。
タナカさんの部屋と私の部屋は間取りがほぼ同じだから、どこに寝室があるか知っているよう。
彼は迷うことなくキスの雨を降らしながらも私を誘導して、無遠慮にその場所を開けると腰に回した腕に力を込め私を抱きしめた。
そっと後ろを振り向かせられると、ワンピースのファスナーをゆっくりと降ろされる。
くすくす……忍び笑いが寒い部屋に響き渡る。
「せっかちね。慌てなくても私は逃げて行かないわ」
「なんとでも言って」タナカさんはファスナーを背中の半分ほどまで開けると、私の背中にそっと口づけ。
ひやりとした口づけが、火照った体に心地よい。
「きれいな背中だね」タナカさんはどこか眩しそうに言って、そして唇を離すと私の手を取り、くるりと反転させた。まるでダンスのターンをしているかのように華麗に回って、タナカさんは私の腰を持ち上げる。
私も軽く飛び上がると、彼の背中に足を回し……抱っこと言う形が一番適切な言葉かしら。とにかくそんな格好でゆっくりと、くるくる回りながらもしばらくキスを楽しんで
その後は―――広いベッドにゆっくりと背中から倒された。
タナカさんの腕の中くるくる回る視界はいつも見慣れている筈の光景なのに、知らない世界のように見えた。
夜も22時を過ぎている。トーンダウンした間接照明の中彼の姿だけが輝いて見えた。
一分一秒でも惜しむかのように、彼はスーツの上着を乱暴に脱ぎ捨て、私の黒いワンピースの裾の中、手を這わせる。
性急なその動作、若さがあって―――好きよ。求められてる、って実感できるから。
彼の大きく骨ばった―――しかしきれいな手が私の太ももをなぞり、それだけで甘い吐息が漏れる。
「ヤバイな……」
タナカさんは私の鎖骨ら辺に顏を寄せると小さく吐息。
「何が?」と目で聞くと
「俺、君が壊れるぐらい――――
何度も何度も
君を抱きたい」
最後まで聞かずして、私は彼の言葉を遮るよう唇を奪った。
壊して
私を壊して――――
永遠に直らないぐらい酷く。