Room sharE
「でも、あの杉崎 亜里沙の車が追突してこようとしたのは俺が図ったものじゃない。あれは偶然だ。
信じてほしい……っつっても、もう無理だろうけどな」
「信じてるわ。だってあなた―――あのときちゃんと“お仕事”してたじゃない、刑事サン」
「まぁね。善良な市民の税金で俺ら食っていけるワケですよ、おねーサン。仕事はちゃんとしないとな」
冗談を冗談で返された。肝が据わってる、と言うのかしら。それとも開き直り?どちらにしろそれぐらい心臓が強くないと刑事さんなんて職業できないわよね。
「で?君はどうしてそこまで知ってて何も対策を練らなかったんだ?君程頭の良い人間が何もせずにいるわけがない」
逆に質問をされて今度は私の方が肩を竦める番だった。
「コンシェルジュに聞いたわ、あなた“たち”が一体何人で『張り込み』をしているか情報を得るために、ね。
物音が煩いって言って、相談を持ち掛けたら彼あっさりと教えてくれたわ。コンシェルジュとしては失格ね。
心配しないで?寝てないから。彼とはお茶をしただけよ」
「コンシェルジュ?」
「ほら、最初にあなたが指紋認証のとき傍らに居た」
「ああ」タナカさんはようやく納得言ったように片眉を吊り上げ、「彼はまだ入ったばかりの新人だったし、君のことをよく知らない感じだった。だから敢えて“我々”の正体も目的を伝えてなかったんだ。
真実を知る人間は極力少ない方がやりやすいんでね
しかし彼が穴だったとは……そこまで考えてなかった」
「コンシェルジュは騙せても、私は騙せなかったようね」
そこまで言うと、タナカさんはふぅと大きくため息を吐いた。
「で?続きを聞こうじゃないか」と促され、
さらに二度目にARISAに襲われたとき、たまたま偶然お巡りさんが居たのも状況的に見て不自然だった。私はARISAに狙われてることを知らなかったけれど、このときすでにタナカさんたちはあの女が私に逆恨みしているってこと知っていたに違いない。
それで極秘に警護を固くしていたのだろう。
その推測を話すと、「あっぱれ」と言わんばかりにタナカさんは肩を竦めた。
「俺のことは、もういいだろう?そこまで身元がバレてるんだし、そろそろ君のこと
聞かせてくれないか?」
タナカさんの目の色が変わった。それまで緩めていた視線から一転、
心臓をも突き破るようなあの強烈な射るような視線に―――
それはタナカさんではなく、『刑事』の眼だった。
「松岡 優輝はどこに居る」
「彼?
ああ、そこのクローゼットよ。
私とずっと“ルームシェア”してたの。
知ってるわよね?
そう。私が
――――彼を殺した
あなたが思う通り」