Room sharE
一瞬
そうね、ほんのひとときだったけれど
私きっとタナカさんのこと
愛した
愛された。
そして私は
ユウキを裏切った。
ずっと一緒に居るって言ったのに―――
ごめんなさい。
ごめんなさい、ユウキ。
そして、タナカさん、素敵な想い出をありがとう。
ああ、でも
次はこんなことにならないわ。
だってあなたはもう隣の部屋には居ないものね。
張り込みお疲れ様でした。
楽しかったわ。
刑事さん。
これからは私、ずっとこの部屋でユウキとルームシェア
するの。
あなたとは
居られない。
タナカさん。
こんな形であなたを傷つけること―――
――――赦して。
「さよなら」
最後の言葉はタナカさんの怒声でかき消された。
彼の腕が伸びてくるのがスローモーションのように見える。
けれど彼の指先は私の手に触れることなく宙に浮いた。体がふわりと浮いた感覚に身を任せ、後はただひたすら堕ちるだけ―――
エレベーターで交わしたキスのとき、感じた感覚よりそれはずっと幻想的だった。
あなたを好きになった代償は
払うつもりよ、タナカさん。
もちろん
ユウキにね。
さようなら
―――――
第一部 完
次ページからは第二部です