Room sharE



「そのケーキ屋、すごく有名なんですよね。職場の女の子たちがよく並びに行ってますよ。なかなか入手困難らしくて」とタナカさんは苦笑を浮かべている。



「僕なんかは甘いもの好きじゃないんで並んで買う意味が分かりませんが、好きな人はおいしいんでしょうね、きっと。


あ、僕この近くの不動産屋で働いてるんです」


タナカさんは聞いてもないのにあっさり身元をバラす。まぁいいけどね。知ったところで私が何をするわけでもないし。


「不動産屋さん……?社長さんか何か?」


会話の流れで聞いただけよ。ただ、このマンション所謂臆ションと言うタワーマンションで全室分譲。もちろん普通の人間が易々と手に入れられるものではない。ゆえにこのマンションは入居時の審査がとても厳しいのだ。


彼は着ているものも高価そうだったし立ち居振る舞いも上品だったから何か権威ある職の人間かと思ったから。そうゆう人に惹かれる女じゃないけれど、少しだけ……そうねほんの少し気になったの。


「僕はしがないサラリーマンですよ。雇われ平社員」


彼は爽やかに笑った。


「しがないサラリーマンがこんな分譲マンションに?」


からかうように言うと、彼は「まいったな」とまた恥ずかしそうに頭の手をやった。


「実はね」と語り出す。







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