凍り付いた恋心なら、この唇で溶かそう。
「身体で慰めればいいのか?」
掴まれた手首が熱を持って、身体全体に広がっていく。
まさかあの、真面目でそういったことに興味のなさそうな龍也がこんなことを言うだなんて思ってもいなくて、動揺から言葉を失ってしまった。
その反応を肯定だと受け取った龍也は私の手を引っ張って、抱き寄せた。
「……龍也、ダメ」
力なく拒んで、その胸板を押し返せば無駄だと言うように、隙間なく身体を密着させられた。
こんな龍也、知らない。
「浮気されたなら、やり返してやればいい」
甘やかで背徳的なそのセリフに目眩を覚えて、私はもつれる舌を動かした。
「……シャワー、浴びてないから。無理」
最後の切り札としてその言葉を吐き出すと、龍也はため息をついて私を解放した。
「俺を拒む理由はそれだけか?」
じっと、黒い瞳が怯える私の姿を捉える。
「……うん」
小さく頷くと、男は今まで見たこともない妖艶な微笑みを浮かべて、私の唇を親指でなぞった。