凍り付いた恋心なら、この唇で溶かそう。
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「ドレス、どれにしようか。気に入ったのはあった?」


幼馴染に抱かれた翌日。

前々から約束していた、ウェディングドレスを決めるため婚約者と街中の専門のショップに来ていた。

私も彼も何も変わらない。気付かないふりさえしていれば、このまま私は幸せになれるはず。


「……ねえ、圭。私に隠してることない?」


楽しそうにウィンドウや店内に並べられたウェディングドレスを見ている婚約者に向かって、私は静かにそう切り出した。

圭は一瞬きょとんとした顔をしたかと思うと、視線を泳がせたあとににっこりと笑った。


「何?急に」


自分の愚行を気付かれていないと思って疑わないらしい彼は、すぐにいつも通り茶化してみせた。そんな彼を見て、私が昨夜から抱いていた罪悪感なんてどこかに吹き飛んでしまう。

愚かなのは、お互い様。知らないふりで、これからもそばに居たらいいんだ。

――本当に、それでいいの?


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