凍り付いた恋心なら、この唇で溶かそう。

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『明日、ちゃんと覚えてる?』


ノイズがかった機械越しの圭の声に動揺して、足の爪先に塗っていたネイルが皮膚へとはみ出してしまった。

慌ててティッシュで拭って、肩と耳で挟んでいるスマートフォンに向かって私は短く返事をした。


「もちろん」


本当は嘘。話題を振られるまで、すっかり忘れていた。いや、忘れたくて、覚えていないふりをした。


「婚姻届ね。一緒に出しに行きたいんでしょ?」

『そうそう。オレ、あれ夢だったんだよねー』

「……その夢」


能天気な圭の声に少しばかりの苛立ちを覚えながら、ネイルに細かい修正を施していく。

その夢は私じゃないと叶えられないことなのかな、なんて可愛くないことを言いかけて、私は口を固く結んだ。


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