凍り付いた恋心なら、この唇で溶かそう。
「確認もせずに開けるな」
不機嫌そうな顔をした幼馴染が、扉の前に立っていた。
「……ごめん、龍也。どうしたの?」
私のマンションから部屋の番号までを知っていながら、長い間一度も訪問して来なかった龍也が訪ねて来るとは思わなかった。
しかもこんな、日付が変わりそうな時間に来るだなんて、何かあったのだろうか。
「会いたくなったから来た。それじゃ理由にならないか?」
いつもの仏頂面が少しだけ悲しげなものに変わった気がして、私は何も言えなくなる。
押し黙ってしまった私をしばらく見つめたあと、龍也はため息をついて玄関に足を踏み入れた。
「龍也」
丁寧な動作で靴を脱ぐ幼馴染のつむじを見下ろしながら、私は自分でも驚くくらいち無機質な声で彼の名を呼んだ。
顔を上げた幼馴染の頬を両手で包み込むと、龍也は少しだけ驚いたように目を見開いた。