凍り付いた恋心なら、この唇で溶かそう。

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腕一本、少しだけ離れて、私は歩道を並んで歩いていた。少し手を伸ばせば手が届きそうな距離、なんてよく言うけれど、まさに今の状況を言うんだろう。

だけど、お互いに手を伸ばしたりなんかしない。歩くたびに身体が揺れても、指先が触れ合うこともない。

何か話すこともなく、互いにうつむきがちに歩みを進めていくだけ。


｢綾音｣


不意に、優しく手首を掴まれて顔を上げる。


｢今、前を見るな｣


龍也の大きな手が優しく私の目を隠すようにして、顔を覆われた。その意図がわからずに、私はその手から視線を外して彼の言いつけを破ってしまった。すぐに後悔する。

横断歩道の白線のその向こう、対角線にある歩道に目立つ二つの影が見えて、私は一瞬気後れをしてゆっくりと瞬きをした。