凍り付いた恋心なら、この唇で溶かそう。
「……どうするの、絶対家族ぐるみで揉めるじゃん」
私の上着のポケットの中で着信を告げるバイブレーションが響き続けている。
ため息をついて顔を上げると、唇に柔らかいものが触れた。
「悪いことをしたとは一切思っていない」
私の唇を軽く吸い上げて、龍也の整った顔が離れていく。言葉の通り悪びれた様子もなく、龍也は私を真っ直ぐに見つめている。
「いっそ、どこか遠くに逃げるか?」
「……バカじゃないの」
真剣な顔をしてそんな軽口を叩いてくる幼馴染の胸板を軽く叩いて、私は込み上げてくる感情を抑えることなく、嗚咽を漏らしながら泣いた。
「今の俺は、お前の涙を拭う権利はあるか?」
躊躇いがちに伸びてきた指先に頬をすり寄せると、伝い落ちる涙を辿って、指先がまつ毛に柔らかく触れた。