凍り付いた恋心なら、この唇で溶かそう。
「お前が俺を男と思っていなくても、俺はずっと、お前を好きな女としてしか、見たことがない」
龍也は苦しそうに呼吸を震わせて、黙っていて申し訳なかったと、静かに呟いた。
「……遠回りしちゃったね、私達」
身体だけが大人になってしまった私達は、どこまでも子供だった。
好きでもない人と付き合って、別れて。
近くにあるものを、触れられる距離にあるものを見ないふりばかりで、誤魔化してきたのだ。
「今からでもやり直せるだろう、きっと」
龍也の優しい声を聞きながら目を閉じると、もう一度、柔らかくて温かい唇が私のものと重なった。
fin.