凍り付いた恋心なら、この唇で溶かそう。
「うわあ、年収一千万エグい」
彼の家は高級マンションだけあって、私が頑張って生活を切り詰めても一泊出来るかどうかの豪華なホテルのような設備と美しい内装の部屋だった。
窓からは夜景だって見える。実際に彼が年収一千万なのかは知らないけど、否定も肯定もしないのでそれくらいは貰っているんだろう。
「コート」
「あ、はい。ありがとう」
ハンガーを片手に手を差し出してきた龍也に、自分の着ていた春用のコートを渡した。
散らかっていると言うからどんな惨状かと想像していたけど、至って綺麗。恐らく彼の寝間着であろうスウェットがソファーの上に脱ぎ捨てられているくらいだ。
私の視線の先に気付いた龍也はスウェットを回収して、リビングから繋がる扉の先に消えていった。恐らく洗濯カゴか何かに入れに行ったんだろう。
私はひとしきり広いリビングを見回して満足したあと、カバンを放り投げてソファーの上に飛び込んだ。
上質な生地とクッションは反発することなく私の身体を受け止め、沈んでいく。