凍り付いた恋心なら、この唇で溶かそう。

「……だらしない」


服や髪の乱れも気にせずにクッションに顔を埋めていると、戻ってきた龍也が顔を顰めてそう言った。


「私がガサツなのは知ってるでしょ」

「まあな」


二十年以上の付き合いで嫌というほどお互いの性格や癖は熟知している。

言動の端々から見て取れるように、龍也は非常に几帳面な性格だ。対して私は何事もほどほどに、が心情。つまりは大雑把。対極的な私達が何だかんだ気の置けない仲になれていることが奇跡に近い。


「もう子供じゃない」


突然、龍也はぽつりとそんなことを呟いた。お互いにとっくの昔に成人したことは承知している。

意図のわからないその発言に顔を上げると、龍也は苦い顔をして押し黙った。言いたいことはあるが言い出せないといった時の顔。


「何、はっきり言ったら?」


私が催促すると、渋々といった様子で、龍也は重い口を開いた。


「……お前は昔から無防備すぎる」


指を差された先を視線で辿れば、行き着いたのは私の腰のあたり――どうやらスカートがめくれて下着が見えていたらしい。

さすがにパンツの一枚や二枚で赤くなったりするほどの純情な男ではないらしいが、気まずそうに目を逸らされた。

何年もこうして二人きりになることがなかったから、すっかり免疫がなくなってしまったのかもしれない。


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