Sweet break Ⅱ

こちらの気持ちなどお構いなしに、関君はもういつもの関君に戻って、腕時計をちらりと確認し『19時20分か…』とつぶやいた。

『飯でも行くか?』
『え』
『嫌なら別にいいが』
『い、嫌じゃない』
『どっちだ?』
『行く!行きます!』
『じゃ、5分で準備してこいよ』
『5分って…無理だよ、15分は欲しい』
『は?なんで、そんなに時間かかるんだよ』
『女性はいろいろあるの…って、だいたいさっき、関君、ゆっくりって言ってたよ』

こちらもこのまま、関君のペースに流されっぱなしでは堪らないと、負けじと反論するも、『そういう意味じゃねぇ…』と、また溜息をつかれた。

『15分!』
『譲歩して10分…10分だけ待ってやる。過ぎたら帰るからな』
『うっ、わかった…10分ね!』

言うや否や、外の状況も確認せずに、会議室の扉を開け、颯爽と走り出す。

『だから、小学生かって…』

そんな私の姿を見送りながら、関君は会議室でひとしきりお腹を抱えて笑い、『…だいたい10分過ぎたって、待つに決まってんだろ』と独り言ちたセリフは、この時の私には、全く知る由もなかった。



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