Sweet break Ⅱ
『関く…』
『少し黙ってろ』
10秒もしないうちに、摺りガラスの向こう側に3~4人の人影。
この後、仲間内で飲みに行くのか、雑談をしながらその先にある社員用玄関から退社していく。
その間、真っ暗な会議室の中で、二人きり。
さっきから、自分の心臓が半端なく早音を打ち続けている。
扉のすぐ横の壁にもたれて、目を伏せるように腕を組む、関君。
一瞬掴まれた腕は、室内ですぐ放たれたが、その部分が熱を持ったように熱く、そっと自分の手を添えてみる。
『わりい…加減しなかった』
人の気配が無くなったタイミングで、関君が私を見てつぶやく。
『あ…大丈夫…』
もう19時を過ぎるこの時間、会議室の窓からの明かりはほとんどなく、互いの表情を確認できるのは、扉にある摺りガラスから入る僅かな光だけ。
先ほど溜まっていた涙は、いつの間にか奥に引っ込み、突然訪れたこの状況をまだ頭で理解できずに、どうにも落ち着かない。
不意に訪れた静寂。
耐えられず、何か差し障りのない程度の言葉を発しようとすると、目の前の関君が小さく溜息をついた。