彩―IRODORI―

マリ

カズヤ先生は、大学に帰って行った。
あたしは、どう見送ろうかと思って前の晩からいろいろ考えたけど、笑って別れることにした。
失恋だけど、カズヤ先生との恋を、悲しい顔で終えたくない。

この恋で知ったことがあった。

両想いでも、報われないことがある。
失恋でも、笑って別れられることがある。

それは、コウキやユウジとの恋では分からなかったこと。
初めて、自分から恋をした。
寂しさを埋めたいからではなく、誰かに愛されることばかりを考えたこともなく、自分から進んで恋をした。

カズヤ先生は、みんなに惜しまれながら去って行った。

本当に最後の最後、教室を出る寸前に目と目が合った。
そして、笑ってくれた。
あたしは、唇で「サヨナラ」と言った。
カズヤ先生は、頷いてくれた。

二人の間でだけ、通じた声のない言葉だった。
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