彩―IRODORI―
こういうところに来るのは、初めてだった。
まさか、今日、こうなるとは思いもしない。
いや、まだ『こうなる』って決まってないじゃない。

あたしは混乱していた。

ぶるり、と震えて、びっしょり濡れた体のせいだと気付く。

「アヤ、先にシャワー使っちゃいなよ」
「コウキは?」
「オレは丈夫だから」
「でも」
「心配してくれてありがと。オレ、鍛えてるから」

優しいなあ、コウキは。
あたしはコウキに、バスルームのところにあったローブを取って渡した。

「こんなの着るの、初めてだ」

コウキは笑った。
でも、顔は少し緊張しているように見えた。

よかった。
あたしとおんなじだ。
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