彩―IRODORI―
あたしの初めては、その日だった。
中学のときからずっと我慢してくれていたコウキは、もうあたしに遠慮なんかしなかった。

男は獣になるんだ。

そう聞いていたけど、本当にコウキも獣になっていた。
優しくて、のんびりしていたコウキとは思えないくらい。

初めて触れられるたびに、びくっと体が震える。
コウキの髪が肌に当たるたびに、ぞくっと体が震える。

不思議な感じだった。
あたしが望んでいたことが現実になったけど、なんだかコウキでない人と果たしたみたいで。
でも、ここにいるのは間違いなくコウキで。
大好きで大好きで仕方のないコウキで。

コウキは何度も何度も、執拗にあたしを抱きしめた。
抱きしめられるたびに、コウキなんだと自分に言い聞かせた。

「好き」
「愛してる」

うつろな意識の中で、どっちが言っているのかもわからなかった。

コウキは何度もあたしの名前を叫び、あたしはコウキにしがみついていた。
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