彩―IRODORI―
「アヤ!」

夏休み明けの始業式の日、声をかけられてビックリした。

「エッ、コウキ!? あんたなの?」
「そうだよ。オレ」

うわぁ、びっくりした。
夏休みの間に、ますます背が伸びたみたい。
あたしよりチビだったコウキの背は、いつの間にかあたしを見下ろすようになっていた。

「め、めっちゃ背が伸びてる」
「アハハ。アヤは縮んだなぁ」
「しっつれいねぇ、縮んでませんよぉだ」

笑う顔は前と変わらない。
あっかんべぇをしたけど、あたしはホッとしていた。

「オレ、レギュラー取れたんだ。6番ショート!」

夏休み中の成果を教えてくれたコウキは、真っ黒に日焼けしていた。
なんだか腕も太くなったし、体格もがっしりしてきたと思う。
たくさん努力したんだろうなぁ。

「おめでと。あんた、なんかいい体になったね」
「マジ? やったぁ。この調子で高校入ったら甲子園行くぞー」

やっぱり、コウキはコウキだ。
コウキは自分のことを、『ボク』から『オレ』と言うように変わった。
男らしくなったなぁ、って思ったけど、あたしの知ってるコウキだった。

それから、誰もコウキのことを「一休さん」って呼ばなくなった。
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