彩―IRODORI―
「ケンカした?」
「してない」
「でも元気ないじゃん」
「彼氏彼女って、色々あるのよ」
「へーえ」

土井くんは興味ありげにあたしを見た。
チャコはこういう風には聞かない。
それが、都合がいいときもあったけど、物足りないって思うこともあった。

今は、なんとなく誰かに聞いて欲しかった。
でも、男のコに聞いてもらうのは恥ずかしいかも。

チャコが次の化学の授業の準備で教室にいない今なら、聞いてもらえるかもしれない。

「土井くんって、彼女いるの?」

土井くんは不意を突かれたような顔をした。

「いや、いないけど…」
「へぇ、意外。今までは?」
「全くない」
「ウソォ! 信じらんない」
「お前らがお盛んなだけだっつーの」

ちょっと頬を赤くして、土井くんが言った。
『お盛ん』って言われて、なんだか恥ずかしくなった。
土井くんが、今、アレを想像したんじゃないかって思ったから。
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