彩―IRODORI―
土井くんは、ものすごくびっくりした顔をしていた。
今日は、よく土井くんのこんな顔を見る。
でも、あたしはドキドキしながらも土井くんが「うん」と言ってくれるのを待っていた。

土井くんは、ちょっと迷ってるみたいに見えた。

「竹下のことは、いいのか?」

あたしは、少しも迷わずうなずいた。

「…じゃ、今日オレ、部活サボるわ」

土井くんがどんな顔をして言ったか、あたしは覚えていない。
だけど、あたしは少しもコウキを裏切ったつもりはなくて、コウキのことはコウキで真剣に好きなつもりだった。
ただ、土井くんのことも、好きになっちゃっただけ。

チャコが帰ってきて、あたしと土井くんのしゃべってるところを見て、

「あれぇ、そんなに二人って仲良かったっけ?」

ってびっくりしてたけど、あたしは「まーね」と言っておいた。
チャコには、きっと刺激が強すぎるから。
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