彩―IRODORI―
コウキは何も知らず、いつもどおり部活に行った。
土井くんは、体調が悪いと言って、部活をサボった。

土井くんの家の近くで待ち合わせて、土井くんの家に行った。

「親、共働きなんだ」

そう言って、案内してくれた。

コウキの家ですら、あたしはあんまり中に入ったことがない。
だから、初めて男のコの家に入るみたいで、急に体がこわばりだした。

「お邪魔、しまーす」

あたしの家も豪邸じゃないけど、そんなに狭いと思ったことはなかった。
だけど、土井くんの家は廊下は狭いし、階段は薄暗かった。

土井くんの部屋に行くのに、土井くんがさりげなくあたしの手を取ってくれたこと、なんだか嬉しかった。
コウキなら、そうしてくれるかな?

家も小さいけど、部屋もやっぱり小さかった。
狭い部屋に、机とベッドと本棚があって、バスケ雑誌が床に散らかっている。

男のコの部屋、って感じ。

あたしがきょろきょろしてると、土井くんがあたしを背中から抱きしめた。
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