彩―IRODORI―
それからあたしたちは、手を繋いだまま、家に帰った。
でも、何も話せなかった。
お互い照れてたんだと思う。

あたし、コウキが好きだったんだ。

それに気づいて、コウキにどういう顔を見せればいいか分からなかった。
コウキも、たぶん同じだと思う。
だけど気持ちを確かめるように手を繋いだ。

あたしの家の前に来て、ようやくあたしはコウキの顔を見た。
コウキはあたしの顔をまともに見れなくて、モジモジしている。

「送ってくれてありがと」
「うん」
「じゃあ、あした」
「うん、あした」

そう言って別れるはずだった。
なのに、あたしが門を開けて玄関のドアのところに来ても、まだそこに立っている。

「コウキ?」

あたしが声をかけると、コウキは俯いて照れている。

「あした、普段どおりに笑ってよ。それから、西高のことも考えといて」

夕闇でちょっと顔が見えづらかったけど、コウキはたぶん、はにかんだように笑ったんだろう。

「うん、考える」

そう言って、彼氏と彼女になったあたしたちは、初めてお互い見つめあって、バイバイをしたのだった。
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