彩―IRODORI―
「アヤ! 聞いて! あたし今度斎藤くんとデートするの!」

登校したばかりのあたしに、チャコが嬉しそうに飛びついた。

「あわわ! ちょっとチャコ、あたし荷物重い!」

テストが終わったばかりで、教科書やら資料集やらを持ってきて鞄が重くて仕方ない。
ああ、チャコはたぶん、毎日こういう風にしてるんだろうけど。
あたしは普段から『置き勉』ってのをするタイプだから、テストでもない限りは持って帰らないのだ。

あたしは鞄を机に置くと、ふう、と息を整えた。

「で? えーと斎藤くんとデートって?」
「そう! 今度一緒にショッピングモール行くんだ」
「遊園地とか映画とかじゃなくて?」
「遊園地って遠いじゃん。小遣い足んないし、映画は今のとこ見たいのもないから」

初デートがショッピングモールねぇ…。
あたしなら、映画かなぁ。
見たいのがなくても、なんでもいいからラブストーリーで。

考えてみれば、チャコと斎藤くんらしいかも。

「そっかぁ! うまくいくといいね!」

チャコは笑った。
あたしから見ても、チャコはすっごくキレイになった。
恋は女を美しくするって、ホントだと思った。
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