彩―IRODORI―
教室にいなかったユウジが、ダッシュで駆け込んできた。
コラ、廊下を走っちゃ危ないだろって。

息を切らせながら、ユウジはニコニコ笑っている。

「アヤ、教育実習生が来てるって」
「知ってる。さっきからみんな騒いでんじゃん」
「めっちゃ可愛い人がいたー」

おお、おお、鼻の下のばしちゃって。
てか、それ、彼女の前でやるの?

「じゃ、乗り換える? あたしから、その人に」

ユウジは「うーん」と少し考えて、

「イヤ、オレにはアヤで十分です。満足してます」

なんて言う。
こういうこと、平気で言うから照れくさいんだなぁ。

「え、アヤと土井くん、結局出来てたの?」

チャコがびっくりしている。

「アヤ、オレのこと言ってくれてなかったの? ひどいなあ」
「あ、うん、良かった! アヤ、良かったね!」

チャコにゴメンと手でポーズを作って謝る。

「きっかけがなくて…」
「ううん、私のこといっぱい聞いてて言えなかったんだよね、こっちこそゴメン」

チャコはいい子だなぁ。
ホントは、コウキと期間がかぶってました、なんて言えない。
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