彩―IRODORI―
友達に隠し事、なんてすごく気持ち悪い。
だけど、言えないものは言えないんだ。

そんなもやもやした気持ちも、ものの五分でかき消されることになった。

「起立、礼」
「おはようございまーす」

学級委員長はいつもながらに、先生が入ってくると目ざとく号令をかける。
あたしみたいに、休み時間になるとダラダラする人間も、なんかビシッとする。
おっと忘れちゃいけないけど、あたしの高校…西高は、一応県内ではそれなりにいい学校として評判なのだ。
まあ、あたしみたいな落ちこぼれが言うのもなんだけど。

「今日から教育実習生が来てます。入って」

教室中がざわめいた。

ウチの担任の先生も、なかなか渋くって悪くないんだけど、やっぱ若いしあたしたちと歳が近いからか、みんなキャイキャイ言って落ち着かない。
ま、女子がやかましくて、男子は「ふーん」って、がっかりした様子。

「はじめまして、このクラスにお世話になることになった、エチゴカズヤです」

そう言って、黒板に『越後量哉』と書いた。
へぇ~、アレで『カズヤ』って読むんだ。

「教科は世界史担当です、よろしく」

ぐっ…世界史は苦手だ。
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